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2018年2月1日木曜日

書籍 : 江戸川亂步-「陰獣」(藍峯舎版)


江戸川亂步が1年2カ月にもわたる第一回目の休筆の後、再起を期して昭和3年(1928)夏、雑誌「新青年」に3回に分けて連載したのが中編小説「陰獣」です。亂步自身をモデルにした怪作家大江春泥が謎の核心として暗躍する奇抜な趣向が評判となり、最終回を載せた号が、雑誌としては異例の増刷を繰り返すほどのセンセイションを巻き起こしました。こうして「陰獣」は、亂步を作家として新たなステージに飛躍させるエポックメーキングな作品となりましたが、さらに加えて、この連載の挿画を担当した21歳の駆け出しの挿絵画家竹中英太郎を一躍、挿絵界の寵児に押し上げる決定的な作品ともなりました。
中井英夫が「乱歩世界の完璧な画像化」と讃えた英太郎の「陰獣」挿画は、登場人物すべてが「幽暗の霧の彼方にうごめく異形の者」(中井)のように妖しく朧げに描かれた斬新なもので、その後も英太郎は「孤島の鬼」「押絵と旅する男」「悪夢(芋虫)」「盲獣」など亂步の評判作の挿画を、一手に担い続けました。が、昭和10年(1935)、押しも押されもせぬ人気挿絵画家となっていた英太郎は、胸中に抱いてきた志と相容れぬ安逸な生活への煩悶から絵筆を折り、翌年には満洲へ渡ってしまいます。そしてその英太郎が、自らの画業の総決算として、平凡社の「名作挿画全集」のために最後に描き下ろしたのが、出世作だった「陰獣」への新たな画風による挿画7点と、作中に登場する大江春泥(=亂歩)の小説作品18点の挿画を一覧にした入魂の画集「大江春泥作品画譜」でした。
藍峯舎版『完本 陰獣』は、亂步にとっても運命的な作品となった名作に、「大江春泥作品画譜」をはじめ、英太郎が画業の最期まで新たなアプローチを続けた「陰獣」にまつわる挿画全点を初めて集大成いたしました。
没後30年を迎え、あらためて再評価のスポットが当てられる竹中英太郎と亂步の究極のコラボレーションを藍峯舎版でどうぞご堪能ください。


<内容目次>
陰獣(「新青年」初出バージョン) 江戸川亂步 挿画 竹中英太郎
「陰獣」 竹中英太郎画貼
「陰獣」挿画(平凡社「名作挿画全集」バージョン)
大江春泥作品画譜
「陰獣」因縁話(回顧エッセイ)
解説 江戸川乱歩の不思議な犯罪 中 相作
限定220部(記番入り)
定価18,000円(税込)
2018年1月16日(火)予約開始
造本仕様
A5判変形 192頁(本文176頁、二色刷挿画16頁)
背継面取表紙・天金箔、丸背、貼函
貼函用紙/五感紙 荒目(黒)二色刷・金箔押
背継表紙/背・赤色染牛革
表裏布・ワールドクロス モヘアクロス(No.341-BLACK)
文字・本金箔押
見返用紙/シープスキン(古色)一色刷
本扉用紙/フェルトン(クリーム)二色刷
口繪用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)二色刷
別丁挿画用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)二色刷
本文用紙/アラベール(ナチュラル)
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)




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